ドア・イン・ザ・フェイスとは、社会心理学で一般的に研究されている承諾を得る手法の一つです。訪問してきた説得者の顔めがけて玄関のドアを閉めるといった比喩のように、説得者は、回答者が断る可能性が最も高い大きな要求を1番目に行うことによって、2番目の要求を回答者に従わせるように説得するものです。
このテクニックが有効な理由は、以下の2つが挙げられます。
返報性の原理
人は、誰かから何かしてもらうと、お返しをしてあげたいという気持ちになります。ドア・イン・ザ・フェイスでは、最初に大きな要求をすることで、相手に「この人に何かしてあげたい」という気持ちを引き出し、その後の小さめの要求も受け入れてもらいやすくします。
妥協の原理
人は、最初に大きな要求をされた後に、小さめの要求をされると、最初の要求を拒否したことに対する罪悪感から、小さめの要求を受け入れやすくなると考えられます。
ドア・イン・ザ・フェイスの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
政治家が、大きな予算の政策を最初に提案し、その後に小さめの予算の政策を提案する
営業マンが、高額な商品を最初に提案し、その後に低価格な商品を提案する
慈善団体が、大きな金額の寄付を最初に募り、その後に小さめの金額の寄付を募る
ドア・イン・ザ・フェイスは、うまく使えば効果的なテクニックですが、注意すべき点もあります。
最初に提示する大きな要求は、相手が断るであろうものであることが重要です。あまりにも現実的な要求では、相手が最初から断ってしまい、2番目の要求を受け入れてもらえない可能性があります。
2番目の要求は、最初に提示した大きな要求と関連性があることが重要です。あまりにも関連性のない要求では、相手が「何が言いたいのかわからない」と混乱してしまう可能性があります。
2番目の要求は、最初に提示した大きな要求よりも受け入れてもらいやすいものであることが重要です。あまりにも難しい要求では、相手が断ってしまう可能性があります。
ドア・イン・ザ・フェイスは、うまく使えば交渉を有利に進めることができるテクニックですが、上記の注意点を踏まえて、慎重に使うことが大切です。