単純接触効果とは
単純接触効果とは初めは興味がなかったものでも何回も見たり聞いたりすることで好きになる心理現象のことを言います。
例えば、初めて聞いたときはピンとこなかった歌でも何回も聞いているうちにその歌の良さが分かるようになるのは単純接触効果によるものです。
単純接触効果は、人、物、言葉、絵画、音などあらゆるものが対象になります。
単純接触効果の歴史
19世紀末にドイツの心理学者グスタフ・フェヒナーとイギリスの心理学者エドワード・ティッチナーが、親しみのあるものの前で感じる「温かみのある輝き」について書いたのが、単純接触効の最も古い科学的記録です。
単純接触効は、1968年にロバート・ザイアンスというアメリカの社会心理学者によって、徹底的に研究されました。
ロバート・ザイアンスによる実験
1968年、社会心理学者のロバート・ザイアンスは、被験者に外国語の単語を声に出して読んでもらいました。
ザイアンスは、被験者がそれぞれの単語を発音する回数を変えてもらいました(最大25回まで繰り返すことができます)。
その結果、被験者は自分がよく口にした単語ほど好感を持ち、被験者が全く読んでいない言葉は否定的に評価され、25回読んだ言葉が最も高く評価されることがわかりました。
その単語に触れるだけで、被験者はその言葉をより好きになることが明らかになりました。
単純接触効果の例
- いつも車で同じ道を走る。
- 同じ曲を何度も聞いているうちにその曲が好きになる。
- 同じテレビCMを何回も見るうちにその商品が欲しくなる。
- レストランでは食べたことのない料理ではなく身近な料理を注文する。
- クラスや職場などで一緒に過ごす時間が長い人を好きになる。
- 政策よりも顔なじみの政治家に投票する。
- 初めて見る美術品よりよく知っている美術品を高く評価する。
- もっといい投資先があってもよく知っている会社に投資する。
単純接触効果が起きる原因
単純接触効果が起きる原因として「前に見たことがあるものは不確実性が低い」「前に見たことがあるものは解釈しやすい」という2つの有力な説があります。
前に見たことがあるものは不確実性が低い
ザイアンスによると、同じ人物や画像、物体に繰り返し触れることで、不確実性が低下するため単純接触効果が生じると言います。
進化心理学に基づくこの考えによると、私たちは新しいものに対して、危険かもしれないと警戒するようにできています。
しかし、同じものを何度も見て、何も悪いことが起こらないと、恐れることはないのだと理解するようになります。
つまり、新しいもの(危険なもの)よりも、慣れ親しんだものの方がポジティブに感じられるため単純接触効果が起こるのです。
例えば、廊下でいつもすれ違うけど、あいさつを交わす程度で立ち止まったことのない隣人を思い浮かべてみてください。
その人のことをよく知らなくても、いつも会って嫌な思いをしたことがないというだけで、おそらくあなたはその人に対してポジティブな印象を持っているはずです。
前に見たことがあるものは解釈しやすい
人は何かを見たことがある場合、それを理解し解釈することがより簡単になります。
このことを知覚的流暢性と言います。
例えば、複雑な実験映画を見たときのことを考えてみましょう。
初めて観たときは、何が起こっているのか、登場人物は誰なのか、把握するのに必死で、結果的にあまり楽しめないかもしれません。
しかし、2回目に映画を観ると登場人物やストーリーがより身近に感じられ、より流暢な知覚を経験したと感じるでしょう。
この考え方によれば、知覚の流暢さを体験することで、私たちはポジティブな気分になります。
つまり、知覚の流動性を経験した結果、2回目に見たときにその映画がもっと好きになったと判断することがあります。
広告における単純接触効果
単純接触効果は広告はによってもっとも活用されています。
企業のロゴを使った広告を消費者に見せることで、消費者はそのブランドを信頼するようになります。
そのロゴををよく見かけるようになっただけなのに消費者は「良いものに違いない、信頼できる」と考えるようになります。
広告における単純接触効果は、製品やブランドが新しいときに最も効果的であると言われています。
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