職場で使える心理学

もしあなたが職場の人間関係で悩んでいるのなら心理学の知識を使って解決できるかもしれません。

シャクターの実験

シャクターの実験(Schachter's Experiment)は、社会心理学者スタンリー・シャクター(Stanley Schachter)によって行われた、情動と認知の関係に関する古典的な実験です。この実験は、1962年に発表された論文「Emotion, Perception, and Behavior」で報告されました。

実験の目的は、人々が同じ身体的興奮(arousal)状態を経験している場合に、その興奮をどのように解釈し、情動を形成するかを調べることでした。興奮状態において、人々はその興奮の原因や意味を理解しようとする傾向があります。この理解のプロセスが、実際の情動の体験や行動にどのように影響を与えるのかを明らかにすることが目的でした。

具体的な実験手順は以下の通りです:

実験参加者は、興奮を引き起こすインジェクション(実際には安全なビタミン剤)を受けます。このインジェクションは身体的な興奮を引き起こすために使用されました。

参加者は、実験室内で実験者と共に待機します。待機室には他の実験参加者もいるように見せかけられました。

待機室内では、他の参加者たちが活発に話し合っている状況が作られました。この状況によって、参加者の興奮状態が強調されます。

実験参加者は、情動の測定を行うために質問紙を配布されます。質問紙には、自身の感情状態や理由、他の参加者たちの影響に関する質問が含まれています。

この実験の結果、シャクターは以下の主な結論を導きました:

身体的興奮のみでは、情動の特定や詳細な理解を提供することはできません。興奮の解釈や情動は、認知的要因や環境要因と相互作用して形成される傾向があります。

環境の情報や他の人々の行動は、参加者の興奮の解釈に影響を与えます。他の人々が特定の情動を表現している場合、参加者はその情動を参考にして自身の情動を形成する傾向があります。

参加者が情動を解釈するために利用する主な要素は、物理的な興奮状態(身体的反応)と環境的な情報(他の人々の行動や状況)です。これらの要素を考慮しながら、参加者は自身の情動を認識・分類し、意味づけることがあります。

シャクターの実験は、興奮と情動の関係を説明する上で重要な貢献をしました。興奮状態は、その解釈や情報の受容によって、さまざまな情動体験をもたらすことが示されました。実験の結果は、情動の理解において、身体的な興奮だけでなく、認知的な要素や環境の情報も考慮する必要があることを示しています。

なお、シャクターの実験は、情動と認知の関係を理解するための初期の研究の一つであり、その後の研究や理論の発展に影響を与えました。情動や認知の相互作用に関する研究は、さまざまな角度から行われ、人間の情動体験や行動理解において重要な要素となっています。