ラベリング理論（Labeling theory）は、犯罪学や社会学の分野で用いられる社会的側面からの犯罪やデビアンス（逸脱）の解釈を提供する理論です。この理論は、人々が自己のアイデンティティや行動を形成する際に、社会からのラベルやステレオタイプの影響を重視します。
ラベリング理論は、犯罪や逸脱行動は単に個人の特性や内的要因によるものではなく、社会的な相互作用の結果であると主張します。具体的には、社会が個人に対して「犯罪者」「問題児」といったラベルを貼ることで、その個人がそのラベルに合致するような行動をとることを促すとされます。このような社会的ラベリングが、個人の自己概念や社会的地位に影響を与え、逸脱行動を強化するとされています。
ラベリング理論は、特に犯罪の取り締まりや刑罰政策に関連して議論されることが多いです。理論の支持者は、社会が犯罪者に対して厳しいラベルやステレオタイプを適用することで、再犯のリスクを高める可能性があると主張します。そのため、ラベリング理論の提唱者は、犯罪者に対するスティグマ（汚名）の除去や再統合を重視し、犯罪者の社会復帰を促すようなアプローチを提案しています。
ただし、ラベリング理論は一部の批判も受けています。批判の一つは、ラベリング理論が犯罪の個人的な責任や社会的危険性を無視しているというものです。また、社会的なラベルが全ての個人に同じような影響を与えるわけではないという指摘もあります。ラベリング理論は、犯罪や逸脱行動の解釈における一つの視点を提供するものであり、他の理論やアプローチと併せて考える必要があります。
