ビュリダンのロバとは、おなかを空かせたロバが左右2方向に道が分かれた辻に立っており、双方の道の先には、完全に同じ距離、同じ量の干草が置かれていた場合に、ロバはどちらの道も進まずに餓死してしまう、という意思決定論を論ずる場合に引き合いに出される譬え話です。
この話は、スコラ学派のフランスの哲学者ジャン・ビュリダン(Jean Buridan)の名を冠していますが、ビュリダン自身がこの話をしたとされる記述は残されていません。ビュリダンの弟子であるニコラウス・オトラントス(Nicholas Oresme)が、ビュリダンの意思決定論を説明するためにこの話を用いたと考えられています。
ビュリダンのロバは、理性に基づいて選択する能力を持っていると仮定されています。しかし、どちらの道も同じであると判断した場合、ロバはどちらの道を選ぶべきか迷ってしまいます。そして、どちらの道を選ぶべきか迷い続けた結果、餓死してしまうというわけです。
この話は、理性に基づく意思決定が必ずしも最善の選択に結びつくわけではないことを示しています。また、意思決定においては、理性だけでなく、直感や経験なども重要な役割を果たすということを示唆しています。