職場で使える心理学

もしあなたが職場の人間関係で悩んでいるのなら心理学の知識を使って解決できるかもしれません。

学習性無力感

学習性無力感(Learned Helplessness)は、心理学の領域で使用される概念です。この概念は、動物や人間が継続的な無力な状況に直面し、自己の力や努力が何の成果ももたらさないと経験した結果、希望や意欲を喪失し、自己効力感の低下を引き起こす現象を指しています。

学習性無力感の概念は、マーティン・セリグマン(Martin Seligman)によって提唱されました。彼の研究では、動物や人間が無力な状況に繰り返しさらされると、最初は努力を行っても何の成果も得られないことを学習し、その結果として将来の同様の状況に対しても無力感を抱く傾向があることが示されました。

学習性無力感は、以下の特徴を持つことが知られています:

希望の喪失: 継続的な無力な状況に直面することで、個人は希望や自信を喪失し、将来の努力や変化に対して消極的な態度を示すようになります。

自己効力感の低下: 学習性無力感を経験した人々は、自己の力や努力が成功につながらないという信念を持つ傾向があります。彼らは自己効力感(自分の能力や努力が目標達成に影響を与えるという信念)が低下し、自己肯定感や自己価値感にも影響を及ぼすことがあります。

意欲の低下: 無力感を抱く人々は、新たな挑戦や困難に対して消極的な姿勢を示す傾向があります。彼らは挫折を恐れ、自己保護のために行動を避けることがあります。

学習性無力感は、慢性的なストレスや困難な状況に直面した結果として発生することがあります。しかし、この現象は逆に、適切な支援や肯定的な経験を通じて克服することも可能です。

セリグマンの研究では、個人に対して予測可能な結果や報酬を提供することで、学習性無力感を克服することができることが示されました。また、サポートや助言を受けることや、新たなスキルや戦略を学ぶことも、自己効力感の回復に役立つことが示されました。

学習性無力感は、うつ病や不安障害などの精神的な問題と関連していることもあります。治療の一環としては、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)やポジティブ心理学のアプローチが使用されることがあります。これらのアプローチでは、無力感を払拭し、自己効力感を回復させるための具体的な手法や戦略が提供されます。

重要な点として、学習性無力感は個人の経験や状況によって異なる程度で現れることがあります。また、一時的な無力感や挫折感を経験することは一般的であり、必ずしも学習性無力感とは限りません。学習性無力感は、継続的な無力な状況や経験がある場合により一貫して現れる特定の心理的なパターンを指すものです。

学習性無力感の理解は、個人の自己効力感や意欲、ストレスへの対処能力に影響を与えることがあります。そのため、無力感を抱く人々への支援や助言では、個人の経験や信念に対して敏感にアプローチし、適切なサポートや資源を提供することが重要です。