職場で使える心理学

もしあなたが職場の人間関係で悩んでいるのなら心理学の知識を使って解決できるかもしれません。

リスキーシフト

リスキーシフト(Risky Shift)とは、グループ内の意思決定において、個人の傾向よりもより大胆でリスクを取る方向に意思決定が傾く現象を指します。グループのメンバーが集まり、共同で意思決定をする場合、一人一人の意見や行動が他のメンバーの意見や行動に影響を与えることがあります。リスキーシフトは、その影響の一つとして観察される現象です。

リスキーシフトは、1960年代にイギリスの社会心理学者ジェームズ・ステイナー(James Stoner)によって初めて報告されました。彼の研究では、個々の人々がグループ内での意思決定において、よりリスクの高い選択をする傾向があることが示されました。具体的には、個人がグループに参加した後、グループ内の議論や相互作用によって、その個人のリスクの度合いが増加することが観察されました。

リスキーシフトの原因には、以下の要因が関与しているとされています:

グループの情報共有:グループ内での情報共有や意見の交換によって、個人の認識や評価が変化することがあります。グループ内での議論や情報の共有によって、リスクの高さや潜在的な報酬の価値が強調され、リスキーシフトが生じることがあります。

社会的比較:グループ内での意思決定においては、他のメンバーとの比較や競争が生じる場合があります。個人は自身の意見や行動を他のメンバーと比較し、よりリスキーな選択をすることで自己の社会的地位を向上させようとする傾向があるとされています。

責任の分散:グループの中で意思決定が行われる場合、個人の責任は相対的に分散されることがあります。個人は自身のリスクをグループ全体と分け合うことで、よりリスキーな選択をしやすくなると考えられています。

ただし、リスキーシフトは必ずしもすべてのグループメンバーに当てはまるわけではありません。一部の研究では、「保守的シフト」や「警戒シフト」といった現象も観察されており、個人の傾向やグループの特性によって意思決定がどの方向にシフトするかは異なることがわかっています。

また、リスキーシフトは単なる意思決定の傾向として捉えられるだけでなく、社会心理学の分野では他の関連する現象とも結びつけられています。例えば、「情報カスケード効果」という概念では、他の人々の行動や意見に従って自身の意思決定を行うことで、個人がリスクを取ることが増えるとされています。

リスキーシフトの理解は、グループ内の意思決定や集団の行動をより深く理解する上で重要です。しかし、この効果がすべての状況やグループに当てはまるわけではなく、個人の特性や文脈によって異なる結果が得られることもあります。